アン・タイラー


あのころ、私たちはおとなだった (文春文庫)

あのころ、私たちはおとなだった (文春文庫)

大好きなアン・タイラーの作品の中でも、今はこの話が一番すき。
一番最初に読んだアン・タイラーだから余計に思い入れがあるのかも。
いつものように面白くてクスッとしたり、ウィルとのやり取りにドキドキしたり。
けど、ふと考えされられるような、しんみりしたりする部分がこの作品には多い気がする。



好きな場面はレベッカとポピーが散歩に出るところ。

玄関のドアを出たところで、レベッカが「うーん、いい気持ち!」と言うと、ポピーは頭を後ろにそらし、目を閉じて「ああ」と言った。柔らかくなめらかな六月の日光がポピーの顔を照らした。

レベッカの忙しない日常が続く中で、ふと出てくるこのお散歩の場面に、読んでいるわたしまでなんだかほっとしてしまう。
わたしの気持ちも一緒にぽかぽかとしてくる。


何度読んでも印象的なポピーの言葉。
もうすぐ百歳の誕生日を迎えようとしているおじいさんのポピー。
物忘れが激しく「役立たずの人間」と言われてしまうポピーが、今は亡き妻を思ってこぼした言葉だからこそ、こんなにじわじわと伝わってくるんだろうな。

世間の人は、愛する者を失って相手を恋しがるのは、禁煙してタバコを恋しがるようなものだと思っとるじゃろ。
最初の日は実につらいが、次の日にはつらさも少し薄れて、日がたつにつれて、だんだんつらくなくなってゆくもんだとな。
だが、そうじゃない、それは水を恋しがっているのと似てるんじゃ。
毎日、日がたつにつれて、その存在のありがたさが、もっともっとわかってくる。


わたしは、この本を読み終える度
ポピーが

前から読んでも後ろから読んでも101回の誕生日を

祝うパーティができますように、と切に願ってしまう。