手をつなぐ


ふと、わたしは、人の手がすきなのかもしれない、そう思った。
男の人の大きくてゴツゴツした長い指も、女の人のすべすべした手の甲も、お爺ちゃんお婆ちゃんの長い年月をかけて刻んできた皺だらけの手も、赤ちゃんのぷにぷにむちむちのぷっくらと小さい手も、見ているとなんだか悲しいような嬉しいような、でもいとしい、そんなもやもやした気持ちになる。



実家では、わたしの部屋は母と一緒だった。
大きくなってからも、布団をふたつ並べてずっと隣で寝ていた。
一緒の部屋という事に不満を感じた時期もあったけど
それでも母が大好きだし、そんな不満を口にしたことは一度もなかった。



母と寝る時、高校生になってからも時々、手を繋いで寝ることがあった。
お互いに冷え性だったけれど、母の手はわたしよりもほんのり温かくて、軽く触れているだけで安心できる不思議な手。
手を繋ぎながら、この手を伝わってわたしが頭の中で思ってることが母に伝わると、何故かずっとそう信じていた。
だから機嫌が悪くイヤなことばかり考えている時は、母にそれが伝わって欲しくなくて、手を繋ぐのを嫌がったりもして。



親子って不思議。本当にテレパシーみたいに理解できることが多い。
でも今は離れたところに住んでいるし、会う機会も極端に少ないから
その不思議な力も薄れてきてしまっている。
また近いうちに手を繋いで眠りたいな。
そして今だから、その手を通じて伝えたい言葉が沢山ある。
今はただ母の手が恋しい。